トリニティスタディとは?

こんにちは、米国在住の投資家ブロガーのhiroです。(@hiro_investudy)

ここ数年で注目を集めている「F.I.R.E (Financial Independence, Retire Early)」というムーブメントをご存知ですか?本ブログではFIRE達成を目標に、できるだけ分かりやすく投資とお金について勉強できる情報を発信していきます。投資の初心者の方向けに、株や債券、ETFや投資信託についてもまとめています。

「働かないで生きていく」、つまり「自分が働かなくても所得が得られる(=不労所得が得られる)」状態をどのようにすれば作ることができるのか?を読者のみなさんと一緒に勉強していきたいと思います。


これまでの記事の中で、FIREの概念や米国株投資により資産を増やしていくことをお話ししましたが、今回はなぜそもそも不労所得で生きていくことができると言われているのか、その大元となる研究の「トリニティスタディ(Trinity Study)」について詳しく解説したいと思います。

資産を取り崩しても資産を減らさずに生活をしていける、その基本的な考え方について解説していきます。

この記事はこんな人におすすめです
  • FIREに興味が湧いて詳しく知りたい人
  • なぜ資産を取り崩しても資産が減らないのか理解したい人
  • トリニティスタディや4%ルールについて理解したい人

トリニティスタディとは

トリニティスタディ(Trinity Study)とは、米国テキサス州のトリニティ大学の3人の教授が「退職後の資産運用の出口戦略として、どの程度の割合・金額を取り崩しながら資産を運用すると資産の寿命を最も長らえることができるのか?」という多くの投資家を悩ませる資産の取り崩し方について研究・発表したものです。

このテーマはまさに「投資からの不労所得だけで働かずに生きる」ためにどのように資産を取り崩し、また、いくらまで資産を貯める必要があるのか?というFIREを達成することと同じテーマの研究であると言えます。

この研究は1926年〜1995年までの約70年間の実際の市場の動向を元に算出されていて、世界恐慌や第2次世界大戦などの世界経済に大きく影響を与えた時代も含んでいますので、特別に景気の良い時だけにたまたま当てはまるということではなく、どんな時代であっても信頼性が高いと言えるでしょう。

「トリニティスタディ」と呼ばれてはいますが、本来の研究のタイトルは「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable」で「リタイア後の貯蓄: 持続可能な貯蓄引出し率の選択」という意味になっています。実際の論文はこちらから参照することができますので、興味のある方は参照してみてください。(英文です)

4%ルールとは

ここで先に4%ルールという資産の取り崩しルールについて触れておきます。投資を始める上で知っておくべき究極の取り崩し方法なので是非とも覚えておきたいルールです。

これは「資産の4%を毎年取り崩してその範囲で生きていけば資産は減ることなく運用し続けられる可能性が高い」というもので、トリニティスタディで導き出された黄金率です。

トリニティスタディでは、株式と債券を資産として保有して運用していくことを前提としています。そして、その保有割合別に毎年一定の%で資産を取り崩していった場合に、最終的に資産が底を突いてしまったら失敗とし、逆に、$1でも残っていたら成功としています。

過去の実績からも、米国株の投資利回りは年率平均で6〜7%程度、米国債だと年率平均で2〜3%程度が期待できるわけですから、ポートフォリオの組み方次第では、毎年資産の4%を取り崩し続けても資産が減らないというのはさほど無理な話でもなさそうに感じませんか?

以前、別の記事でもFIREの目標金額の設定方法について解説していますが、ここでも再度おさらいしておきます。

FIRE達成の目標金額の設定方法

FIRE達成の目標金額=年間支出×25

※なぜ年間支出の25倍なのかというと、それは毎年資産の4%を取り崩すことを想定していて、年間支出を資産の4%で抑えるには、年間支出を25倍すれば貯めるべき資産総額がわかる、というわけです。(4%で割る=0.04で割る=25倍する)

わかりやすい目標設定の一例をご紹介すると、年間支出を400万円と仮定した場合は、FIRE達成の目標金額はその25倍の1億円となります。

こちらの記事も参考にしてみてください。

資産の取り崩し成功率

さて、ここからは実際の研究結果について詳しくご紹介していきます。なぜ4%が合理的な引出し率となるのでしょうか?

まず始めに、トリニティスタディで行った資産の保有配分と引出し率のシミュレーションのパターンをご紹介します。

資産保有配分
(株式:債券)
検証期間引出し率
100% : 0%
75% : 25%
50% : 50%
25% : 75%
0% : 100%
15年
20年
25年
30年
3% 〜 12%
トリニティ・スタディのシミュレーションパターン

そして、保有する株式は「S&P500のインデックスファンド」、債券は「長期の高格付け社債」とする前提となっています。

また、トリニティスタディでの成功の定義についても改めて記載しておきます。

トリニティスタディの成功の定義

資産が$1以上残っていたら成功

つまり、検証期間の最後までに資産が尽きなければ成功、ということです。それでは検証結果を見ていきましょう。

【検証1】1926〜1995年(世界恐慌・第2次世界大戦)

こちらの表は1926〜1995年の長期間に渡って実際の株式・債券の値動きを元にシミュレーションされた結果です。1926年からの数値となっているため、世界恐慌や第2次世界大戦といった世界経済に大きな影響を与えたイベントが加味された結果となっております。

表1: ポートフォリオ成功率(1926〜1995年)
Trinity Study Table1
出典:Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable By Philip L. Cooley, Carl M. Hubbard and Daniel T. Walz

【補足】表の見方は以下の図を参考にしてください。

表の上部に資産の引出し率、表の左側に資産保有比率(株式と債券)と資産を取り崩す年数が記載されています。表の中央の数値が成功率を表しています。
Trinity Study Table1 補足

こちらの表1は世界恐慌後の影響を反映しているため、世界大戦後の50年での検証結果も以下の表2に示されています。

【検証2】1946〜1995年(第2次世界大戦後)

世界恐慌の影響を除外した、1946〜1995年の検証結果の表です。

表2: ポートフォリオ成功率(1946〜1995年)Trinity Study Table2

上記の2つの表から、以下の2点が明らかです。

  • 資産の引出し率が増えれば増えるほど成功率は下がる
  • リタイア後の引出し期間が長くなればなるほど成功率は下がる

また、債券の含有率に注目して見ると、債券比率が増えると成功率が下がる傾向が見て取れます。債券は株式と比較するとボラティリティの低い(資産の安定性が高い)資産です。長期に渡って資産を減らさずに一定の資産を引き出し続けるには、株式の保有比率を上げて株式によって資産を増大させる必要がある、というのがキーポイントと言えそうです。

一方で、債券をポートフォリオに含めることは資産を分散投資することになります。表1で示されているように、7%以下の低い引出し率の場合は、株式:債券=50%:50%のケースで高い成功率を記録しています。これは株式の暴落リスクを債券を一定数ポートフォリオに加えておく事で押さえ込んでいることに他なりません。

どちらの表からも、30年間3〜4%の引出し率で資産を取り崩せば、高い確率で資産が底を付かなかったことが検証されています。

これが 4%ルール という言葉が使われはじめた根拠となっています。

【検証3】1926〜1995年 インフレ調整後

さらに、表1をベースにして、インフレ・デフレによる物価変動を考慮して引出し金額を調整したものが以下の表3となります。

インフレの時には物価が上がり必要になる生活費も上がるため引き出す金額が増え、逆に、デフレの時には物価が下がり生活費は下げて引き出す金額を減らして調整しています。

表3: ポートフォリオ成功率(1926〜1995年 インフレ調整後)Trinity Study Table3

インフレを考慮して検証すると成功率は全体的に若干下がっていますが、実際の物価の変動に応じて引き出す金額を調整しているためこちらの成功率の方がより信頼できます。

この表の中で、4%の引出し率で30年後の成功率が高い、言い換えると、最も長く資産を生きながらえさせる確率が高いのは、

  • 株式:債券=75%:25% で 成功率=98%
  • 株式:債券=50%:50% で 成功率=95%

この辺りとなっています。

※株式100%も成功率が95%ですが、資産は株式100%ではなく債券にも分散して投資する方がリスクを抑えられるため除外しています。

つまり、株式の資産割合を50〜75%のレンジで債券とmixしたポートフォリオで毎年3〜4%で資産を取り崩していく運用が、かなり高い確率で資産を枯渇させずに取り崩せそう、というわけです。個人的にはなるべく株式の比率は高めて運用益を狙いたいので、株式65〜70%程度のバランスが良いのではと考えています。

実際の資産の残額

上述の通り、トリニティスタディの「成功」の定義は、資産取り崩し期間の最後の年に$1でも資産が残っていたら成功、となっています。

しかし、例えば「40歳でFIREして30年後の70歳に$1しか資産が残らなかった・・・」というケースでも一応研究の結果としては「成功」扱いとなってしまいます。これでは30年以上先の状態が心配になりますよね。

そこで次の表です。トリニティスタディでは、資産の残額が最終的にいくらになったのか、もまとめてくれています。

表4: 最終的な資産残高Trinity Study Table4

この表では、$1,000の資産から毎年定率で取り崩していった場合の残高を表しています。

「0」になってしまっている部分が、「失敗」です。

逆に「0」より大きいところは「成功」で、「1,000」未満になってしまっている部分は元本を取り崩して資産が減ってしまうものの「成功」と定義されている状態です。

「1,000」以上になっている部分は、定率で取り崩しているにも関わらず、運用益で資産を増やして元本自体増えている「究極の成功」と言える状態です。

また、データにはバラつきがありますので、それぞれの検証で「平均」「最小値」「中央値」「最大値」が算出されています。

さて、いかがでしょうか?

5%以上取り崩してしまうと成功率が下がってしまうのは表3までの結果でわかっていますから、4%の列だけ参照します。

まずは「1,000」以上の部分がかなり多く占めていることが確認できますので、「成功」するけど資産がギリギリ枯渇寸前になる、という可能性は大分低そうということがわかります。逆に中央値を見ると「1,000」以上になっていますので、4%ルールに従って取り崩すことで、その運用益が資産を増やし続けてくれる可能性が高いということがわかりますね。

株式:債券=50%:50% だと、資産が減ってしまう可能性は低そうですが、資産が増える期待値も低くなります。

株式:債券=75%:25% だと、資産が減ってしまう可能性は高そうですが、資産が増える期待値も高くなります。

どのようなアセットアロケーションにするかは個人の好みになりますが、私は株式65〜70%程度をターゲットにしています。

最近までの実績を考慮した長期間での検証

これまでにお伝えしてきたトリニティスタディの研究結果から、4%ルールで取り崩す際の成功率の高さと、資産はゼロに近づいてギリギリ成功するというよりもむしろ増え続ける可能性が高いことがお分かりいただけたかと思います。

次に出てくる疑問は、

  • 「とは言っても1995年までの実績で、近年のITバブル崩壊やリーマンショックの影響を加味していないのでは?」
  • 「30年分のデータが無くて、FIREで30年以上リタイア生活を続ける場合は成功率下がるのでは?」

という点かと思います。

その点も大丈夫です。

すでに Early Retirement Now が調べてくれており、1871〜2016年のデータを元に、最長60年の取り崩し期間での検証結果が報告されています。

表5: ポートフォリオ成功率(1871〜2016年 インフレ調整後)Early Retirement Now Table

出典:Early Retirement Now: The Ultimate Guide to Safe Withdrawal Rates – Part 1: Introduction

流石に60年の長期で取り崩す場合は、成功率が下がってきますね。しかし、それでも取り崩し率を3%に下げればほぼ100%の確率で成功できそうですし、株式:債券=75%:25%の場合でも4%の取崩しで85%の高確率で60年の運用に耐えることが可能な試算です。

以上のことから、1900年代の古いデータだけでなく、2000年代の比較的新しいデータでの検証においても、4%ルールが確かに信頼できるものだと言えると思います。

数%の失敗リスクをカバーするには

とは言っても必ず誰でも100%成功する、というわけではなく、数%の確率で運悪く「失敗」(=リタイア中に資産残高がゼロになってしまう)ことは起き得るわけです。そこで、どうやったらこの数%の失敗リスクを回避する事ができるでしょうか?

FIREムーブメントの第一人者で、自身も31歳でFIREを達成しているクリスティー・シェンが、自身の著書「FIRE 最強の早期リタイア術」の中で提案している「現金クッション」と「利回りシールド」という考えをご紹介します。

そもそも失敗してしまう原因が何かというと、リタイアして資産の取り崩しを始めたばかりの最初の5年間で、大規模な株価の暴落に遭遇してしまうことが原因とされています。株価が暴落して資産総額が目減りしている状態で、株式を4%ルールで取り崩さねばならないため、その後の上昇局面でも大きく回復する事ができずに最終的にジリ貧に陥ってしまう、というケースです。

リタイア直後の5年で株価の暴落が起きるかどうか?、これは誰にもコントロールできない完全に運次第の出来事です。

そこで万が一リタイア後に株価暴落に見舞われてしまっても「FIRE失敗」とならないように、「現金クッション」と「利回りシールド」の準備をしておきましょう。

現金クッション

現金クッションとは、その名の通り現金をクッション代わりに用意して、株価暴落時に投資資産を売却しなくても良いように備えておくことです。

それではいくら用意すれば良いのか?ですが、以下のような計算式が用意されています。

現金クッションの計算式

現金クッション=(年間支出−年間利回り)×株価暴落の年数

※年間利回り=ポートフォリオ全体の年間利回り

※株価暴落の年数=世界恐慌の時で立ち直りに5年かかっており、過去の各暴落時の立ち直り年数の中央値は2年。(5年としておけば最大リスクに備えることになる)

年間支出が400万円、資産額が1億円、ポートフォリオ全体の年間利回りが2.5%だとすると、現金クッションに用意する金額は以下のような式で求められます。

現金クッション=(400万円−1億円×2.5%)×5年=750万円

このケースでは、追加で750万円の現預金があれば、万が一リタイア直後に株価暴落に見舞われてしまっても、株価暴落中は資産の元本の取り崩しを控えて、代わりに投資利回りの配当・利子と、この現金クッションの中から引き出したお金だけで生活をやりくりする事で失敗リスクを下げる事ができます。

とは言っても、FIRE目指して総資産を築きながら、追加で現金クッションまで用意するのは中々大変ですので、次にご紹介する「利回りシールド」という考えも合わせて必要になります。

利回りシールド

利回りシールドとは、資産を一時的に高利回りの資産に置き換える事で、現金クッションとセットでリタイア時の株価暴落に備える技です。

一般的なインデックスファンドの投資利回りは2-3%程度とされています。自身のポートフォリオを見直して、類似の高利回り資産に置き換えることで全体的な運用利回りを一時的に上げます。

例えば先程の例で利回りが2.5%だったところ、3.5%まで上げることができれば、現金クッションの計算式は次のようになります。

現金クッション=(400万円−1億円×3.5%)×5年=250万円

これで追加で用意しなければならない現金クッションの金額を少なくする事ができます。お気づきと思いますが、利回りを4%まで上げる事ができれば、

現金クッション=(400万円−1億円×4%)×5年=0円

となり、上がった利回りによる配当・利子だけで生活ができる状態となります。

もちろんポートフォリオ全体を高利回り商品に置き換えることで、資産全体のボラティリティが高くなってしまい、リスクが上がってしまうため、リタイア中の株価低迷期にだけ一時的に行うものとしています。

高利回りの資産の例としては、

  • 優先株ETF
  • REIT ETF(不動産投資信託)
  • 社債ETF(投資適格の銘柄に絞る)
  • 高配当ETF

などが挙げられます。

具体的な投資商品などは上述の書籍「FIRE 最強の早期リタイア術」に記載がありますので、興味のある方は読んでみていただければと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?

トリニティスタディによって、資産を取り崩しながら資産を減らさずに維持・運用できる方法が見えてきたと思います。この研究から4%ルールという取崩し方に高い信頼が寄せられるようになり、FIREを目指す人の目標金額の立て方にも影響を与えています。

まとめると、「株式:債券=50%〜75%:50%〜25%のアセットアロケーションで長期資産投資すると、資産の4%を毎年取り崩しても高確率で資産を維持できる」ということです。

トリニティスタディ(Trinity Study)まとめ
  • 資産を株式:債券=50%〜75%:50%〜25%のレンジでアセットアロケーションする。
  • 毎年4%ずつ取崩しても長期的に資産が無くなる事なく運用できる。(4%ルール)
  • 4%ルールが信頼できるため、逆算してFIRE達成の目標金額を年間支出の25倍と定められる。
  • リタイア後に失敗するのは、リタイア直後の不運な株価暴落で、資産元本を取り崩さなければならないケース。
  • 失敗リスクを下げるために、「現金クッション」&「利回りシールド」の準備をしておいて、株価暴落時に資産元本を取り崩さなくても良いようにする。

※実際に投資される際は、ご自身の責任と判断でお願いします!

最後までお読みいただいき、ありがとうございました。引き続き、投資の初心者の方向けに有益な情報を発信していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

Have a smart investudy!